#03-01-2_6チームのKPIを設定しプレーモデルを作る
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01バスケットボールの基本原則
#03-01バスケットボールの基本原理 INDEX2.勝敗を決める要素とそれを分析する4ファクター- チームの得点はどうやって計算できるか【期待値の考え方】
- バスケットボールのKPIとチームのKPI
- シュートの期待値とシュートの本数を決めるもの
- 得点計算に用いられる現代バスケットのスタッツ
- 【PPP】と【POSS】を分析する4ファクター
- チームのKPIを設定し、プレーモデルを作る
この章では、前章で確認した試合に勝つための
【自チームの得点】>【相手チームの得点】
という目的を達成するため、バスケットボールにおいて「得点を相手より多く取る」ために、最も大切なことは何なのか、ということを整理します。
さらにそれらを分析するスタッツである「4ファクター」について整理し、「勝つため」にどうすれば良いか、ということを数字で分析できるようにします。
- チームの得点はどうやって計算できるか【期待値の考え方】
- バスケットボールで最重要項目
- シュートの期待値とシュートの本数を決めるもの
- 得点計算に用いられる現代バスケットのスタッツ
- 【PPP】と【POSS】を分析する4ファクター
- チームのKPIを設定し、プレーモデルを作る
前回までの記事で、得点に影響するものは、シュートの期待値とシュートの回数の2つの要素であり、シュートの回数に影響するものはオフェンスリバウンドとターンオーバーの2要素。
よって最も重要な要素は
- シュートの期待値
- オフェンスリバウンド
- ターンオーバー
であることを確認し、この3つの要素を評価/分析するスタッツとして
4ファクター
- eFG%
- FTR
- ORB%
- TOV%
が一般に使われていることを解説しました。
前の記事はこちらです。

スタッツを自分のチーム作り・指導に活用する – KPIとプレーモデル
ここまでは、現代バスケットボールの共通原理を整理してきました。
いわば、「この世に存在するすべてのチームに共通する内容」です。
ここでは
- スタッツをどう自チームで活用すれば良いか
ということについて、企業等でよく使用されるKPIを用いて解説し、そのチームのスタイルや、KPIから
- 実際に何をどのように指導して行くのか
つまり「プレーモデル」を作るということについて説明します。
これまでは、一般的な内容だったのに対し、ここからは自チームの指導に直接関わる部分で、最も重要な(そして今の日本で最も欠けている部分だと私が感じている)プレーモデルという考え方について説明します。
KPIとは?
まずは、スタッツを実際に指導で活用するための「KPI」についてです。
KPIとは、主に営利企業において、目標の売上や利益(KGI)を達成するために必要な各プロセスの達成状況を定量的に把握するための指標です。
簡単にいうと、ある数値目標を達成したら自動的に最終目標(KGI)が達成されるような指標です。
KGIに関してはこちらの記事で触れています。

チームのKGIとKPIを設定する
さて、前回最も重要なスタッツとして4ファクターを取り上げました。
そしてその4ファクターの根底にあるのはPPPとPOSSの2つです。
重要なことはその「PPP・POSS・4ファクターをどのように使うか」です。
PPPやPOSS、4ファクターの数値からざっくり何が良かった、何が悪かったかは分かります。
前回示した私の例の2つがそれです。
しかしそれでは、まだ解像度は低いと考えます。
それぞれチームの特性に合わせてKGIである両チームの得点とPPP・POSS・4ファクターを始めとるするスタッツをどのようにKPIに設定するかが重要です。
KGI/KPI設定の具体例
具体的に見ていきましょう。
例えば、チームカラーとして速攻を主体とするバスケットボールを展開するチームAがあったとします。

このチームならKGIの設定は
- 自チームの得点>80点
- 相手チームの得点<70点
となるかもしれません。
それに対してPPP=0.8に設定したとすると、POSS=100が導かれます。
では、KPIはPPP>105と設定してみようと考えられるかもしれません。
次に、速攻主体のチームで一般的に懸念されるのは、TOVが増えることです。
ですので、TOV%に着目してTOV%としてはTOV%<15%をKPIにしようと考えられるかもしれません。
すると、おおよそ1試合でTOVを16本までに抑えることが目標と見えてきます。
それが達成できれば
105(POSS)ー16(TOV)=89(シュートの回数)
からおよそ90回シュートが打てるので、それならばT高校の力からすれば80点は取れるだろう、という論理です。
- POSS>105
- TOV%<15%
これらが達成されれば、KGIである「得点>80」がおおよそ達成できる
もちろん相手チームがいて、相手のスタイルにも影響されるのですが、「チームとしての具体的な勝ち筋」を共有することは大切だと考えます。
そのため、KGI・KPIといった言語化が重要になります。(このような用語を選手と共有する必要があるかはまた別の問題ですが)
- まだまだわかりにくいという人のための、KGIとKPIの具体例
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もともとのビジネス界でもKGIとKPIはその違いがわかりにくいとよく言われています。少し具他例で説明します。
例えば、ある保険営業マンの月間の成約件数目標が10件だったとします。
すると、この保険営業マンにとって
KGI=月間成約件数10件
となります。
彼の営業データを分析してみると、アポをとって訪問案内をするとこれまで約5%の確率で成約に持ち込めるということがわかりました。
そうすると
成約件数=訪問回数×成約率
ですからKGIを達成するためには「アポイントを200件取れば良い」ということが導かれます。
つまり、彼にとって
KPI=月間アポイント200件
となるわけです。
KPIが達成されることによって、自動的にKGIが達成されているわけです。
ほかには、同じ保険の営業マンでも営業業態によっては月間の訪問件数に限りがある場合もあるでしょう。(例えば企業向けで、企業には1日2件しか回れないなど)
その場合は、アポイントの数を増加させることが難しいので、【成約率】を向上させることの方がより重要になります。
その場合は成約率の方がKPIとなるかと思います。
KPIについてはこちらの書籍がわかりやすいです。

チームを指導しながらKPIを決めていく
最初にKPIを指導者が示して、それに向かってやっていくという方法ももちろん良いのですが、実際の指導現場では、毎年選手は変わりますし、新チームになったときチームの全体像とにその数値まで正確に見通すことは、正直難しいですよね。
そのため、チームのスタイル(T高校の場合はrun&gun)を提示し、KPIの数値は時期が進むにつれて選手と考えながら、明確にして行くのが良いかもしれません。
そして、先ほども書いたように、相手のスタイルにもよるので必然的にKPI自体がゲームによって流動的になります。
もちろん、目標の数値が高すぎても現実味がないので、達成可能な数値を提示し、そこから選手と一緒に引き上げて行くというやり方もアリです。
数値で振り返りPDCAを回す
大切なのは、チームとしてスタイルを共有し、そのスタイルを実現するために最も重要なスタッツを決め(これがKPI)、数値で振り返ってPDCAサイクルを回すということです。
参考:高校生の4ファクター目安
一般的な高校生が目指す目標の目安を参考に紹介しておきます。
- eFG% > 45%
- FTR > 20%
- ORB% > 30%
- TOV% < 20%
参考までにBリーグのランキングを載せておきますね




チームのスタイルと勝ち筋からプレーモデルをつくる
さて、ここまででT高校ではKPIが設定されました。
- POSS>105
- TOV%<15%
これらが達成されれば、KGIである「得点>80」がおおよそ達成できる
これを前提に、チームとして目指すバスケットボールを体系化し整理した「プレーモデル」が作られます。
例えば、最も大枠のプレーモデルとしては
- 常に速攻を狙い、早い攻めで期待値の高いシュートを狙う
- 速いプレーの中でもTOVを出さない
などが考えられます。
プレーモデルによって練習内容が決まる
たったこれだけのプレーモデルでも、必要なスキルが整理され、そのことにより練習すべきことが整理されてきます。
- 常に速攻を狙い、早い攻めで期待値の高いシュートを狙う
- 体力・脚力の強化
- トランジションでのオフェンスのプレー原則
1.リバウンド後のアーリーオフェンス
2.シュートを決められた後のアーリーオフェンス - ハーフコートOFでのクイックヒッター
- オールコートでの1v1スキルとドリブルからのフィニッシュスキル
- ショートクローズアウトに対する1v1スキル
- トランジション3pt
- 速攻からのハリバック
- 速いプレーの中でもTOVを出さない
- トランジションでの役割分担(キャスティング)やアーリーオフェンスの型の遂行
- オールコートでのパスやストップ、スピードに乗ったドリブルなどのファンダメンタル
- 首振りなどの視野の切り替え
- 遠くにパスを飛ばせるスキル
- ノードリブルプレーなどの判断力
いまパッと思いついただけでもこれらが挙げられます。
これらが重点的に練習できるように、練習計画を立てていきます。
T高校では
- シューティング練習では、対面シュートではなくオールコートのトランジションシューティングを取り入れる
- パスの練習では、トライアングルパスよりもスクエアパスやスリーメン
- 「ボールミート→1v1」練習よりも「ドリブル1v1」や「ショートクローズアウト→1v1」
を練習して行くべきだと分かります。
例えばPnRの練習にしても、ハーフコートの3v3よりもドラッグスクリーンの練習を多くした方が良いかもしれません。
やるべきことは無限にあるが、できない
以前の記事にも書きましたが、「バスケットボールで大事なこと」は無数にあります。
したがって、練習しなければいけないことも無限にあります。
しかし、現実問題としてほとんどのチームでは練習時間は限られていますし、それもそんなに長くないでしょう。
すべてを網羅し十分に練習することはできないのです(そして仮にそれをしても選手はさほど上手くならないと思います)。
自分のチームでは何を重視するのか決め、それに練習時間を使う。
その整理を行うのがプレーモデルなのです。
私の失敗談
私は、過去10年間ほど、これまで解説してきたスタッツやKPI、プレーモデルをしっかりと指導に取り入れられていなかったので、失敗してきました。
その失敗を紹介します。
最終目標を言うだけで、どんなバスケットボールをすれば良いかわからない
私は得点力が高くイケイケのチームを指導したことがほとんどないので、基本的に
「60点取って、50点代に押さえて勝つ」
というようなゲームを目指していました。そしてそれを選手に伝えていたことも多いです。
しかし、これはKGI(最終的な目標)のみを設定しているということです。
「60点取って、50点代に押さえて勝つ」
ためには一体何をしたら良いのかがわかりません。というか私自身がわかっていなかったのです。
- ペースを下げて走り合いをしない
- DF頑張る
くらいがせいぜいです。
なので振り返りも「DFが甘かった」とか「ミスが多かった」とかいったレベルの解像度のものしか出てきません。
60点取るためには何を具体的な目標にすれば良いのか
50点に抑えるためには何を具体的な目標にすれば良いのか
のKPIの設定がなかったのです。
これをしっかり設定し、そのKPIが達成されてないなら、なぜ達成できなかったか数字で振り返りが行えますし、達成できたのに勝てなかったとしたら、KPIの設定が間違っていたのか、他にもKPIが存在するかもしれません。それを検証していくことができます。
KPIという具体的な目標設定を行うから効果的な振り返りが行えるのです。
全部教えて、結果何もできない
私は、指導を始めたときから(生意気にも)多少バスケットボールの理解には自信がありました。
パスではこれが大事、ドリブルではこれが大切な練習、このスキルを身につけるためにはこのドリルをやって・・・
ドリル開発も好きだったので新しいドリルもどんどん考えましたし、積極的に講習会に参加して、国内・海外の有名コーチのドリルもどんどんストックしていき、自チームでも取り入れました。
その結果、試合を見ると「何もない」のです。
こういってしまうと、これまでの選手に非常に失礼な言い方になってしまいますが、当時も全力で指導していたことだけは胸を張って言えます。
そして、その結果、選手が上手くなっていたことも事実です。
周りの先生からも上手になってるねとお褒めいただくことも実際多かったです。
でも、「何もない」のです。伝わりますかね、この感覚。
全体的に、それなりにバスケットが上手になっている。それなりに勝てる。
それは事実なんですが、「自分のチーム」を作ったと言う感覚になれないのです。
少ない時間で、全部を教えた結果、全部がちょっとずつ上手くなったチームにしかならなかったのです。
ですので、少し格上のチームと当たると結局何もできず、爪痕を残すことができない。
みたいなチームにしかすることができませんでした。
多分、そういう感覚の指導者の方は多いのではないでしょうか?
「ああ、自分が教えたって別の人が教えたってたいして変わらないな。自分がコートに立ってプレーできれば楽なのにな。」
そんなふうに思っている人もいるのではないでしょうか?
ズバリ、それはプレーモデルがないからなんです。
そういった方は、このCoaching Labのコンテンツで必ず解決できます。
まとめ
- チームの現状や、自身のバスケスタイルから、チームの勝ち筋を考えてKPIを設定する
- KPIから「プレーモデル」を作成する。
- KPIとプレーモデルに照らして振り返りをしてPDCAを回す














